市町村長・理事長に聞く
Interview
地域農業の現状や課題、今後の展望などについてお聞きします。
第3回
川﨑美壽大丸用水土地改良区理事長

梨園で作業する川﨑理事長

川﨑理事長
大丸用水は、稲城市大丸で多摩川の水を取水して、川崎市多摩区までの農地に水を供給しています。江戸時代の初めに作られ、本流と支流を合わせると70kmにも及び、まちなかを網の目のように流れています。
大丸用水土地改良区は、東京都と神奈川県にまたがっていて、昭和27年に設立されました。稲城市と川崎市の農業者で構成され、現在は、農業用水路の整備や維持管理、水量の調整などを行っています。近年は、宅地化や農業者の高齢化などにより組合員数も減少傾向にありますが、関係機関とも協力して維持管理に努めています。

内田常務理事
最近の大丸用水の話題としては、堰の改築がありますね。

川﨑理事長
現在、国や都県、市町村が一体となって、多摩川の安全性を高めるため「多摩川水系流域治水プロジェクト」に取り組んでいます。その一環として、国がこれまでの堰を撤去して、新たな取水施設を整備する工事を進めており、現在は、ここから水を取り入れています。

撤去された大丸用水堰

新たに整備された取水施設

内田常務理事
土地改良区の歴史の中でも大きな出来事ですね。
今回は稲城市のことを中心にお聞きしたいと思います。市では水田より果樹園の方が多いですが、農業用水は果樹栽培にも使われているのでしょうか。

川﨑理事長
農業用水と言うと水稲栽培のイメージがありますが、稲城市では果樹園での利用が多い状況です。
稲城市は、ナシとブドウの生産では都内第1位です。贈答用や直売が好評で、市の農業産出額でもナシとブドウで7割以上を占めています。
私も梨園を経営していますが、近年は異常気象で、夏の猛暑や干ばつが果実の生産や品質に深刻な打撃を与えています。そんな時には農業用水を活用することが大きな助けになっています。
ナシの歴史は古く江戸のころから栽培がはじまり、明治時代に「長十郎」や「二十世紀」などの品種ができて、本格的に栽培が増えました。稲城果実生産組合ができて、2024年で140年を迎えました。
ナシでは、稲城市で誕生した品種の「稲城」、ブドウでは、都の農業試験場で開発した「高尾」などが栽培され、市の特産品になっています。

管理の行き届いた品種「稲城」の梨園

まちなかの水田

内田常務理事
大丸用水は市内を網の目のように走っていて、まちづくりとも深い関わりがありますね。

川﨑理事長
はい。大丸用水は市民にとって身近な存在だと思います。用水沿いに散策路やベンチが設けられていたり、親水公園があったり、市では用水を活かした緑と水辺のある環境づくりを進めています。
用水は分岐を繰り返し、大きな幹線や支線、農地の横を流れる小さな用水路など様々な姿を見せます。用水同士が立体交差しているところもあるんですよ。

用水沿いの憩いの空間

大丸用水同士の立体交差

内田常務理事
農業用水の管理でご苦労されていることはどんなところでしょうか。

川﨑理事長
先程も述べましたが、国により多摩川に新たな取水施設が設けられ、現在、取水を始めていますが、その施設で水を取り入れる流入ゲートの前にスクリーンが設置されています。施設内にゴミや水草が侵入しないという利点がある一方、時間が経つとスクリーン自体にゴミや水草が溜まり取水に支障を来すため、定期的な清掃が必要となります。現在は、組合員で協力してかんがい期には月に4回程度、非かんがい期には月に2回程度の清掃を実施することで、安定した取水を確保しています。用水路については、地域ごとに土地改良区の会員が土砂や水草、ごみなどの清掃作業を行っています。
また、大丸用水は農業用水だけでなく雨水排水としての機能も持っています。近年増加している台風や集中豪雨時には、事務局や稲城市消防本部と連携を取り、遠隔監視設備を用いて取水施設の状況や多摩川の水位などに留意した上で、迅速に水門を操作することで水害を未然に防いでいます。

内田常務理事
最後に、土地改良区の今後の方向についてお聞かせください。

川﨑理事長
現在は、組合員の高齢化、相続や区画整理などにより組合員数と受益地が減少傾向にあります。また、取水施設の老朽化に伴う維持管理に要する費用も年々高騰しており、運営は大変厳しい状況にあります。しかしながら、大丸用水は今でも多くの水田や果樹園などに貴重な水を供給している歴史ある水路であり、散策路や親水公園としても整備され、子供たちが水辺の生き物と親しめる場にもなっていて、私は後世に残すべき財産であると思っています。
最近では大丸用水に関心のある稲城市の市民団体と協力して、かんがい期前に幹線水路の浚渫(しゅんせつ)を実施しました。都市農業の中で地域の住民と協働しながら、大丸用水の重要性を理解していただき、行政などの関係機関には支援をお願いするとともに連携して運営していくことがより大切になると考えています。

内田常務理事
都市の発展と歴史ある農業用水が共存・調和していくためのご苦労や工夫がよく分かりました。
今日はお忙しい中、ありがとうございました。
※2025年3月14日に稲城市役所会議室でインタビュー、聞き手は水土里ネット東京 内田常務理事
内田常務理事
今日は第3回目の「市町村長・理事長に聞く」ということで、水土里ネット東京の理事である大丸用水土地改良区の川﨑理事長に土地改良区の状況や今後の方向などについてお聞きしたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
はじめに、大丸用水土地改良区の概要についてお聞きかせいただければと思います。